●連載「クイズ王のすごい考え方」について
この連載は書籍『壁を越えられないときに教えてくれる一流の人のすごい考え方』(アスコム)から抜粋、再編集したものです。
自己啓発書は、読んでいるときは内容に思わず納得。しかし読み終わると書いてあることを忘れ、実行に移せている人は少ないと思います。本書は、そんな問題点を解消する画期的なものです。
インパクトの強いエピソードをクイズ形式で紹介しているところが、本書の最大の特徴です。イチローや黒澤明、スティーブ・ジョブズといった一流の人たちの考え方が、問題を解きながら楽しく学べます。さらにクイズを友人や知人に出題することで、記憶の定着は倍増するでしょう。
著者は「タイムショック」優勝、「ウルトラクイズ」準優勝などの輝かしい実績を残してきたクイズ王・西沢泰生。
そんな西沢氏が出題するクイズを通じて、一流の人に近づきましょう!
●著者プロフィール:西沢泰生(にしざわ・やすお)
1962年、神奈川県生まれ。中学2年生のころにテレビでみたクイズ王にあこがれ、大学時代には漫画研究会にて漫画をたしなむと同時に、クイズ番組に出場するようになる。出場回数は20回を数え、「パネルクイズ アタック25」「クイズタイムショック」などで優勝。「第10回アメリカ横断ウルトラクイズ」では、ウルトラクイズ史上唯一の北米チャンピオンに輝く。日本初のクイズ同好会「ホノルルクラブ」に所属。
仕事では約20年間、社長秘書と兼任で社内報の編集を担当。現在は赤坂勤務の会社員。「チャーニーのお気楽日記」「やっさんの私的おススメブック日記」の2つのブログを主催している。
関東地方のとあるゴルフ場。コースの設計は一流でサービスもレベルが高く、キャディの質もよいそうです。平日でも大盛況となっています。
しかもこのゴルフ場、ビュッフェ形式の朝食を無料で提供しています。朝が早いゴルファーにとって朝食をどう済ませるのかは悩みのタネですから、こちらも当然大好評。でも、ただでさえ人気のゴルフ場が、なぜ朝食の無料サービスまで行うのでしょう?
問題:ゴルフ場がお客さまに朝食を無料で提供する事によって、得ているメリットとはいったい何でしょう?(ヒント:実はゴルフ場にとって悩みのタネとなっている、ある業務が激減するのです)
答え:ゴルフ場に遅刻するお客が激減すること
ゴルフ場には、キャディの割り振りやコース内の進行状況を管理する「キャディマスター」と呼ばれる職種の人がいます。この人たちの朝の大仕事が、遅刻するお客さまの対応。
例えば、3人で7時からコースをまわるグループのうち1人が遅刻してしまうとスタートできません。その場合には、すでにメンバーが揃っている次のグループを先にスタートさせるのです。その前の遅刻グループは最後の1人が到着するのを待ってからスタートするなど、ゴルフ場の朝は何時に来るか分からない遅刻者への対応に、非常に手間と時間がかかるそうです。
しかしこのゴルフ場では、朝食無料サービスを始めてから遅刻者が激減しました。きっと誰もが「タダで食べられるなら、少し早目に行ってゴルフ場で食べよう」と思ったのでしょうね。これによって、ゴルフ場は無益な遅刻者管理に追われることなく、本来のサービスアップに時間を割くことができるようになったというわけです。
「損して得とれ」とはまさにこのこと。ビュッフェ方式の朝食分くらい、軽くペイしてしまうメリットです。お客さまもゴルフ場も両方ハッピーになれるこの発想。仕事でもプライベートでもお手本にしたいですね。
目先の利益に走ったり、自分の部署だけ得をすることばかり考えていては、セコいし面白くもありせん。全体を上から見ることで、トータルでプラスになることを考えて実行するのが賢い選択だと思います。
企画会社を経営する小山薫堂も「よい企画とはどんな企画?」と問われて、「いろいろなところに利益をもたらす企画」と答えています。
敏腕プロデューサーとして有名な秋元康は、自身の著書『企画脳』の中でこう語っています。
「伊勢丹の紙袋は他のデパートよりも少し大きいらしいです。お客様は、他で買ったモノもこの袋にまとめて入れて移動するので、結果、伊勢丹の『歩く広告』になります」
軌道に乗って定着するサービスというのは、結局は皆に喜ばれるサービスなのですね。誰かは喜んだとしても、その裏で誰かが不幸になってしまっているというのは、いつかは破たんするサービスです。いつも、全員が満足できるアイデアを見つけることを心がけたいものです。
本日の一言:相手も自分も、両方にメリットがある「システム」を考えよう。
【出典】『残念な人の仕事の習慣』(山崎将志著、アスコム)、『企画脳』(秋元康著、PHP)